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わたしのブログ

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続きです。

初めて聞くソ連兵の声に娘たちは震えて「片山さん、私たちを連れて町へ逃げて)と恐怖のどん底に突き落とされた。ソ連兵に捕まれば親の見ている前でも~される。この近所の大連機械の社宅で本当にあった話しである。お爺さんも「片山さん、どうかこれたちだけでもつれて街に逃げてもらえんだろうか。」婆さんと病人は私が見る。頼みます。」私も今のようなことはまた起こることは恐ろしい。「明日、連れて行く。そのかわり皆男になり切ることが出来るか?身なりも心もだ。」「男になるから連れて行ってチョウダイ。」という返事である。
 翌日。満人が小さな荷車を持ってきた。それに夜具、皆の必需品を積んで、奥さん、娘三人、男の子一人、顔に煤をつけさせ男装させて台山屯を出た。
 途中、どうしても通らなければならない大連機械通りに出てみると突き当たりの橋に遮断機が出来ていてソ連兵が二人いた。「良いか。皆、男だぞ。」と言い聞かせながら橋まで来た。思ったとおりソ連兵が銃剣で荷物を二、三回突き刺して私たちの周りを青い目で見回している。娘たちは恐ろしいのか私の輿の所にしがみついてきた。「皆、男だ。しっかりしろ。」と励ましてもやはり女だ。私がソ連兵に遮断機を指差して「アップ、アップ」と言ったつもりである。わかったらしくあげてくれた。ソレッーと車を引いたが動かない。動かないはずである。娘たちは橋の向こう絵駆け出していったので渡し一人だ。ソ連兵が押してくれたらしい。夢中とはこのようなことだろう。
 私が橋を渡ったとき、後ろの方でマダーム、マダームと言っていたことを覚えている。ソ連兵は女だと言うことを知っていたのだ.橋を渡った所で娘たちは青い顔をして固まっていた。震えている。それほど恐ろしかったのだ。「この先ソ連兵はいないかね。猛威ャャ。」と言った。私の方こそ嫌いである。「さあ、皆、もう少し押してくれれば大正広場を通って藤枝さんのいるアパートだ。」私たちは一目散にアパートに駆け込んだ。


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